ジャパニーズヒップホップの歴史を築いた5つのアルバムとは?時代背景と共に各アルバムを徹底解説

HIPHOP

みなさんこんにちは!

東京生まれヒップホップ育ちを地で行くバーバーの中林です!

プライベートではラッパーとして音楽をやってたりなんかもします。

ヒップホップといえばここ日本でも、近年の「高校生ラップ選手権」「フリースタイルダンジョン」に代表されるように若年層を中心に大きなムーブメントとなっていますね。

これらをきっかけにヒップホップを聴き出した方も多いのではないでしょうか?

しかしヒップホップと一言で言っても、ハードコアな物からポップな物まで様々ですし、膨大な作品数がありますよね。

また、普段アメリカのヒップホップは聴いていているけど日本のはよく分からない、なんて方多いのではないでしょうか?

ヒップホップ好きならば、僕たちのルーツである「日本語」で作られた日本人のヒップホップもしっかり抑えておきたいですよね。

そこで今回は、ジャパニーズヒップホップの歴史に燦然と輝く名作アルバムを5枚、その時代背景とともに紹介させていただきます。

  • 今までになかった手法や要素を取り入れ、それが高く評価されている
  • 影響を受けてあとに続いたフォロワーアーティストがたくさんいる
  • セールス面で大きな成功を収めている
  • 僕の独断と好み

を基準に選んでみました。

それではどうぞー

1、簡単にジャパニーズヒップホップの歴史を紹介

とその前に、日本でジャパニーズヒップホップがの歴史を簡単におさらいしましょう。

1970年代後半にニューヨークのブロンクス地区で生まれたヒップホップカルチャーが日本に上陸したのは1980年代半ばでした。

最初はアパレルやスニーカーなど、ファッションを通して広がっていきました。

音楽でヒップホップカルチャーを体現するアーティストが活躍し出したのは1990年代に入ってからです。

  • ECD
  • Microphone Pager
  • キングギドラ
  • You the Rock
  • Buddha Brand

など、今では「レジェンド」と呼ばれている彼らが出てきたのがこの頃です。

その後、彼ら世代が大きく飛躍し、メジャーシーンで活躍したのが2000年代初頭です。

彼らはTVにラジオに雑誌に大きく取り上げられ、今では「ブーム」と呼ばれる現象を作り出しました。

そしてレジェンド世代の下の世代達や1978年生まれのラッパー達がその波に乗り、一気にヒップホップシーンは多様化します。

  • Ozrosaurus
  • 妄走族
  • Nitro Microphone Underground
  • 韻踏合組合
  • MSC
  • MOSAD
  • Magma MC’s

などがそれに当たります。

その後、ブームは下火になりますが、アンダーグラウンドシーンや配信などではアーティスト達が先鋭化、2000年代後半はコアなヒップホップか、ポップス恋愛系に振り切った楽曲が多く見られました。

2010年代に入るとヒップホップシーンはYou Tube上で大きく盛り上がり、フリースタイルバトル人気に火がつきます。

2012年に「高校生ラップ選手権」、2015年に「フリースタイルダンジョン」がスタートすると若年層の間で一気に大流行、再び「ブーム」の到来です。

バラエティー番組やCMにラッパー達が再び起用されるようになり、ジャパニーズヒップホップのリスナーは各段に増えました。

さらにヒップホップ専門ラジオ局「WREP」の開局、ヒップホップ専門チャンネルのある「abema TV」の開局など、ヒップホップメディアが次々と発展を遂げます。

10年代後半にはその勢いはアンダーグラウンドシーンまで波及し、

  • 舐達麻
  • C.O.S.A
  • DOGMA
  • RYKEY

などと言ったハードコアなラッパー達も一躍表舞台で活躍するようになりました。

このまままたブームで終わってしまうのか、それとももうしばらくこの勢いが続くのか、わかりませんが、ジャパニーズヒップホップが今1番面白くなっていることは確かですね。

2、ジャパニーズヒップホップの歴史に欠かせない5つのアルバムを徹底紹介

それではお待たせしました。

ここからは「ジャパニーズヒップホップの歴史に欠かせない5つのアルバム」の紹介です。

歴史を踏まえた上で見ていきましょう!

 

2ー1 空からの力/キングギドラ (1995)

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「空からの力」は1993年に

  • K Dub Shine
  • Zeebra
  • DJ Oasis

の3人で結成された「キングギドラ」の1stアルバムです。

「ジャパニーズヒップホップの金字塔」

「日本語ラップの教科書」

なんて呼ばれたりもします。

日本語でラップする上での韻を踏む技術を世に知らしめた

のがこのアルバムです。

今でこそジャパニーズヒップホップでも韻を踏むのは当たり前になっていますが、黎明期では「日本語で韻を踏む」ということにすら四苦八苦していました。

ところが、キングギドラは単語単位で多種多様に4文字5文字の韻をしっかり踏んで行き、更には

“何人のラッパーがちゃんと韻を踏んでいるか数えてみよう”    

と曲中でシーンに対してスキル至上主義を提示します。

ちゃんと韻を踏めないラッパーが多かった分、固い韻を多用する彼らのスタイルは明かに頭1つ抜きん出ていたんですね。

単語単位で長い韻を踏んで行くそのスタイルは、K dub shineが最初にやり出した、と言われています。

キングギドラ結成前のZeebraは、日本語でのしっかりとした韻の踏み方が分からず、英語でリリックを書いていたそうです。

そんな時にK dub shineの倒置法を用いた単語単位の韻を見て「お、これなら行ける!」と日本語でもチャレンジし出したんだとか。

この後のラップブームで大活躍したラッパー達がインタビューで「影響を受けた1枚は?」と聞かれると、「空からの力」の名前が出てくることが多いです。

 

2ー2 STILLING,STILL DREAMING/Tha Blue Herb (1998)

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1997年にBoss the MCDJ O.N.Oによって北海道札幌で結成された「Tha Blue Herb」の1stアルバムです。

確固たる信念と強い怒りのエネルギー、そして深い知性が、聞く者の心を奮い立たせる不朽の名作です。

Boss the MCのラップスタイルは当時非常にユニークで、そのスキルは当時「東京のラッパーが軒並み捲られた」と評判になりました。

さらに彼の書く詩世界は文学的と評され、これまでのジャパニーズヒップホップシーンには見られない物でした。

そこにトラックメーカーO.N.Oの、深淵さ、無機質さ、ときにはサイケデリックなトリップミュージックのようなトラックが合わさり、全く新しい形のヒップホップを生み出しました。

ところが、このアルバムのリリースはちょうどヒップホップブームに突入した時期です。

当時のヒップホップメディアといえばラジオと雑誌、TVでしたが、それらはほとんど全てが東京に集中し、華やかな東京以外の地方都市のヒップホップシーンには全く光が当たっていないような状況でした。

「さんぴんキャンプ」のVHS映像作品がリリースされた時も、当時まだ10代でそこに参加していた若き日のTokona-X(愛知県常滑市を拠点としていたラッパー)の姿が全編に渡りカットされる、なんて事が行われていたりしたのです。

Boss the MCはそんなシーンの状況を「黙殺」と呼び、このアルバムの中で痛烈な批判をします。

“去年のじゃなく「証言」の続きが聞きたい/東京への用件はわずかそれくらい”

これは東京でも大きな話題になりました。

翌2000年にはRUN-DMCやケミカルブラザーズなど、そうそうたるメンバーが集結するフジロックへ出演します。

その時のライブパフォーマンスは、多くのラッパーに影響を与えました。

 Tha Blue Herb/Ill-beatnik  Live at Fuji Rock Fes 2000

メジャーのレコード会社が牛耳っていたシーンに革命を起こしたこのアルバムは、地方都市のヒップホップでもトップに立てることを証明し、インディーズやアンダーグラウンドのシーンの存在をなくてはならないものへと変えたのです。

 

2ー3 花と雨/SEEDA (2006)

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「花と雨」は幼少期をロンドンで過ごしたバイリンガルラッパー、SEEDAによる4枚目のアルバムです。

東京に生きるB-boyの喜怒哀楽とスリリングな生活、街の情景を鮮やかに描写した傑作です。

SEEDAの名前はそもそもSCARSと言うグループの活動で知られていました。

彼らは、「花と雨」の少し前に「The Album」という1stアルバム(こちらも必聴!)をリリースし、その危険すぎるリリックでストリートの話題をかっさらっていました。

さらに同時期にSEEDAはDJ ISSOと組んで「Concrete Green」というミックスCDをリリース。

アンダーグラウンドの人脈を通じて繋がった煙たくて黒いアーティスト達をフックアップし、一瞬にして完売しました。

こういった活動で注目を大きく集めていたSEEDAが出した総決算的なアルバムがこの「花と雨」になるわけです。

そういった経緯もあり、このアルバムは全編を通して徹底的にストリート目線で作られています。

いわゆる隠語を多用することで「分かる奴には分かる」様に作られており、分からない人には何の事を歌っているのかは分からないようになっています。

それを汲み取れるリスナーにとってはある種の連帯感を生み、SEEDAはストリートの代弁者となっているのです。

2019年、リリースから10年以上の時を超えて「花と雨」は映画化されました。

SEEDAの半自伝的な内容となっていて、彼の葛藤や痛みがヒリヒリと伝わってくる傑作になってます。

映画「花と雨」オフィシャルサイト より引用

 

2ー4 赤落/鬼一家 (2008)

「赤落」は2008年にシーンに彗星の如く現れたラッパー、が率いるクルー、「鬼一家」のアルバムです。

その特異な人生経験に基づく怒りと哀愁、情緒に溢れた鬼のリリックは、聴くものを圧倒します。

このアルバムの一曲目にして鬼の半自伝的な曲、「小名浜」から凄まじい言葉が並び、彼が普通の道を歩んで来た人間ではないことがよく分かります。

この曲はシーンから非常に高く評価され、ジャパニーズヒップホップ史に残る名曲として多くのヘッズに愛されています。

鬼のリリックはほとんどが実体験に基づくものです。

だからこそ、唯一無二の説得力があります。

存在は知っているけど遠い世界である刑務所内や、煌びやかな夜の街、時には小名浜へ、リスナーは鬼の鮮明な記憶を刻んだ言葉に誘われ、非日常を追体験することになります。

そして「赤落」のアーティスト名義が「鬼一家」である事からも分かるように、このアルバムには鬼以外にも様々なアーティストが参加しています。

D-EARTH、K.E.I、BLOMといった強い個性を持つ鬼一家の面々や、BES,PUNPEE,I-Deaといったシーンの重要人物がクレジットされています。

ヒップホップはアメリカのカルチャーですが、鬼は日本人の感性のまま、日本語の特性を活かしたフロウでスタイルを築き上げました。

トラックに関しても、アメリカナイズされていない、日本人の感性で作られたような音が多いですね。アルバム全体を通して「和」を感じさせる、とよく評価されますが、僕も同意見です。

日本語のリリックの重みを噛みしめたい人にはピッタリの傑作です。

 

2ー5 Modern Times/PUNPEE (2017)


PUNPEE “MODERN TIMES” – SUMMIT より引用


「Modern Times」
は2000年代中頃から、ラッパー、プロデューサー、DJとしてマルチな才能を見せるPUNPEEの1stアルバムです。

まるでおもちゃ箱のような、楽しさと遊び心、モノづくりへの愛がたっぷり詰まったこのアルバムはたくさんの音楽ファンから愛されています。

PUNPEE=「パンピー」の名前が示す通り、彼の雰囲気は全くラッパーっぽくないです。

イケイケやアウトローのヒップホップとは毛色が違いますが、それでも有り余る彼の才能は、ジャパニーズヒップホップシーンの中でも際立っています。

アルバムはディズニー映画のようなオープニングで幕を開け、2057年のPUNPEEが自分のラッパー人生を振り返る、というSFのストーリー形式で構成されています。

曲間の所々で2057年のPUNPEEの語りが入り、うまくリスナーを物語の世界に没入させてくれます。

そういった映画のような構成と作り込み、そして聴きやすさが相まって大ヒットとなり、2回目のヒップホップブームの波の最高到達点となりました。

長年のヒップホップファンから聞き始めのキッズまで全ての層に広く深く届いたという意味ではこのアルバムはぶっちぎりだと思います。

さらに特別な生い立ちや経験、バックボーンのない普通のプレイヤーでも、スキルとセンスがあれば認められる、ということをPUNPEEは身をもって証明しました。

草食系、文化系の代表のような彼が、ゴリゴリマッチョなラッパーを音楽で圧倒して行く姿に勇気づけられたヘッズも多かったのではないでしょうか。

また、彼のこだわりはアートワークまで徹底しています。

歌詞カード内にも様々なオマージュや、通なファンなら思わずニヤッとしてしまう細かな遊びがあちこちに。

ネット上ではその解釈や出所を巡って考察サイトや記事が上がる、なんて現象まで起きました。

「MODERN TIMES」収録曲のMVも非常に高いクオリティでアップされています。

「タイムマシーンに乗って」は凝ったアニメーションと大胆なバックトゥザフューチャーのオマージュがベースとなったストーリー仕立てです。

このアルバムは本格的な作りながらもとっつきやすい曲が多いので、初心者向けヒップホップが聞きたい方にはぴったりです。

バックミュージック程度にさらりと聴くもよし、歌詞カード片手にガッツリ世界に入り込んで隠された仕掛けやオマージュを解くもよし、人によっていろんな楽しみ方ができると思います。

 

3、まとめ

今回は「ジャパニーズヒップホップの歴史に燦然と輝く名作アルバム5選」ということで、

  • 空からの力/キングギドラ
  • Stilling,Still dreaming/Tha Blue Herb
  • 花と雨/Seeda
  • 赤落/鬼一家
  • Modern Times/PUNPEE

の5枚を紹介しました。

一口にヒップホップと言ってもいろんなラッパーがいて、いろんな表現があることがお分かり頂けたと思います。

もし気に入ったら、そのアーティストのアルバムを1枚聞いてみてください。

ヒップホップには「フィーチャリング」という文化もあります。

1枚聞いたら大抵複数のアーティストがフィーチャリングで参加していますよね。

気に入ったアルバムに、気になるフィーチャリングアーティストがいたら次はその人のアルバムを聞いてみるのもいいかもしれません。

そのアルバムにはまた更に違うアーティストがフィーチャリングで参加しているはずです。

そうやって追っていくと、気付いたらあっという間に、ヒップホップに詳しくなってしまっているとおもいます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

ChillChair 中林司